自己演出としてのかつら

さまざまなファッションアイテムが自己演出術として用いられます。
支配・被支配のあらわれともいえる制服、知性や大人っぽさの表現としてのメガネ、コンテンポラリーと見せかけてパンクな表現にも流用可能なネクタイなど、身につけるものを通してセルフイメージをより強化できるのは間違いありません。

自己演出、あるいは自己表現というとどうしても芸術家が自己も作品として仕上げる、といったイメージが先行するかもしれません。事実そうなのですが、彼らの自己演出術は必ずしも芸術家の世界で完結するものではないのも確かです。
普段意識することなくとも、多くの人はさまざまなボーダーをまたいで生活しています。
ボーダーというのはすなわちその人に期待される理想像、言い換えると役割です。
家庭でのあなたと職場でのあなた、趣味の集まりでのあなたはどこかしら違うあなたです。
仮にあなた自身が実感していないとしても。

そこで自己演出術なのですが、あるボーダーの中で地位が不安定ならば、自己演出術によってその地位、役割を操作してしまいましょう。
それにより、あなた自身が望むイメージを安定的に表出することができます。

かなり長い前置きになりましたが、これから自己演出術でかつらを用いた芸術家を例にして自己演出の面白さを考察してみます。
ポップアートの旗手として一時代を築いたアンディ・ウォーホル。
有名人の写真を加工して増殖させるその手法で消費社会、資本主義社会の虚像をあぶりだしたとされていますが、彼のトレードマークとして有名なのが銀髪のかつら。
金髪でも茶髪でもない銀髪、より無彩色に近い色で人工性、もっといえば生命感をできるだけ薄めようとしたのが透けて見えます。
というのも、彼は制作拠点をアトリエでなく「ファクトリー」と呼称し、作品も先述のように自我や内面を徹底的に消し、反復、増殖といった機械のアナロジーへ傾倒していったことから、自らも生身の肉体を持つ芸術家でなく、機械として振舞おうとしたことから銀髪かつらという自己演出にたどり着いたのではないかと考えられます。
彼は銀髪かつらに加え、整形手術も施すことでより自分自身の機械化に没頭していきます。

コスプレ文化の隆盛もあり、派手な色目のかつらも手に入りやすくなりました。
アンディ・ウォーホルのように自己の機械化を目指す人はそう多くないかもしれませんが、さまざまな色目のかつらで今までにない自己演出術で新しい振舞い方を追求するのも素敵な趣味になるかもしれません。

そうすると、色の心理効果も知っておく必要があるかもしれません。
色と人格イメージの結びつきもありますので、より効果的な自己演出が可能になります。

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